中谷 宇吉郎
『ファンタジア』
今、日本に來ている『ファンタジア』は、半ばシネマスコープ的に改變してあるが、本質的には、十數年前にディズニィが作った、初めの『ファンタジア』と、同じものである。
この映畫が何時作られたか、正確な年代は、調べればすぐ分ることであるが、十數年前に出來たことは確かである。太平洋戰爭の最中に、南方で手にいれた鹵獲品の中に、この『ファンタジア』や『ガリバーの旅行記』などがあった。
そのうち『ガリバー』の方は、試寫を見たが、『ファンタジア』は、遂に見る機會がなかった。あまりにも高度な科學と技術とが盛り込まれているので、恐米感を起させる虞れがあるということになって、何處かの金庫の奧深く、しまい込まれたのである。
考えて見れば、可笑しな話で、『ファンタジア』を作った科學と技術とは、飛行機を造るにも、潜水艦を造る場合にも、使われていたわけである。「耳をおおうて鈴を盜む」という中國の古い諺があるが、それを二十世紀の今日、地で行った恰好である。