中谷 宇吉郎
新しい生花
この頃、新しい生花が、大流行のようである。枯枝にペンキを塗ったり、トタン板みたようなものをぶら下げたり、奇妙な形のしゃがれた枯木を使ったり、まことに人の意表に出たものである。
新しいものの好きな日本人には、この斬新な生花が、大分歡迎されているようである。北海道の田舍の小さい町へ行っても、よくこの種の生花が見られる。屋根はトタン葺、周圍は板張りのうす汚れた店先の小さいショウ・ウインドウに、アルミニウムの粉を塗りつけた枯枝が飾ってあるのを見ると、まことに妙な氣持になる。
もちろん老人たちや、舊い傳統の生花をやっている連中には、この近代生花は、まことに評判が惡い。ああいうものは生花ではない、というのが、定評になっている。事實、あれは、日本でいう「生花」ではないのであって「アメリカの生花」なのである。
日本では、この近代生花を、非常に新しいものと思っている人もあるらしいが、アメリカには、前からあったものである。材料などもアメリカのものと非常に似ていて、アメリカ生花の輸入といってよい。輸入された人は、アメリカ生花の良いところを、日本の生花に採り入れたと言われるかもしれないが、この兩者は調和融合というわけには行かないものである。