中谷 宇吉郎

稲の二毛作

大阪からの飛行機は、室戸岬の上を通って、高知まで、一時間十分で飛ぶ。天氣がよいと、陸地の上を短絡して、五十分くらいでいってしまうこともある。まことに隔世の感がある。

室戸岬の上を、飛行機でとんで、一番驚いたことは、あの急峻な岬の山地が、ほとんど頂上まで、段状の耕地になっている點であった。乏しい土地を、最後の一隅まで、使おうとする日本人の努力の姿が、まざまざと見られる。

耕地の一部は緑で、他は黄色である。同乘の土佐の人らしい紳士が、あの實っているのは稻ですよ、と教えてくれた。水田の二毛作で、早場米はもう十日も前に出たそうである。この話は前から聞いていたが、實際に七月下旬にもう米が穫れているところを見ると、まことに不思議な氣がする。

この意外な感じは、水田の傍に行って見ると、一層強められる。一方の田では、どんどん苅り入れがされている。その隣の田では、もう地均しがすんで、田植が始まっている。田植がすんだばかりの緑の田と、穗の垂れた黄色の田との對稱は、まことに珍しい景色である。

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