中谷 宇吉郎

浮輪

シカゴはミシガン湖に面しているので、夏になると、ビーチは湖水浴の連中で、たいへんな賑わいである。とくに今年は何十年ぶりとかの暑さで、土曜日曜などは、鎌倉の海岸のような騷ぎである。

湖といっても本州の半分くらいある大きい湖なので、見たところは、全く海の感じである。對岸はもちろん見えない。波もふだんはかなりあって、水難の危險は、いつも注意している必要がある。

砂濱で遠淺になっているところは、所々にしかない。そこをビーチ(サンド・ビーチの略)と稱して、シカゴ市民の夏の第一の遊び場である。水泳を習うというような氣持はあまりないので、たいていは水にはいってボチャボチャやって遊んでいるわけである。

泳げない連中が多いので、監視は非常に嚴重である。見張人のことを生命護衞(ライフ・ガード)といっているが、それが數人いて何時でも注意している。面白いのは、浮輪をもって泳いではいけないことになっている點である。もっとも小さい子供の玩具の浮輪は別問題である。

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