中谷 宇吉郎
炎暑
今年は世界的に非常に暑い年らしい。
例年の札幌の七月は、非常にいい時候であるが、今年は三十四度を越える日があって、避暑のつもりで來た内地の人たちを、大いに面喰らわせた。
東京の暑さももちろんであったが、シカゴへ來てみると、連日九十八度、百度(攝氏三十六・六度ないし三十八度)という日がつづくので、がっかりした。それでも八月半ば過ぎになってから、これでもまだ樂になったので、その前はひどかったようである。全然中だるみなく、百度上下の炎暑が、一ヵ月もつづいたので、皆すっかり參ったそうである。
市内に住んでいる人は、店はもちろんのこと、アパートでも、風通しは惡く、煉瓦も鋪道もやきつけられているので、東京や大阪の一番暑い日よりも、もっと惡い。しかし避暑に出かけられない人たちは、そういうところで、實によく働いている。日本から來ている學生たちも、たいてい夏は働いて、學資をつくっているが、並大抵の苦勞ではない。