中谷 宇吉郎
恐るべき親権
昨年歸國する時に、上の娘二人を、大學の寄宿舍に入れて來た。
アメリカでは、子供が二十一歳以上になると、親は學資の心配をしないというのが、社會通念になっている。皆奬學金をもらうか、アルバイトをして、自力で大學へ通う。大學生の九割以上は、そういう學生である。もっとも少しは親からも貰うが、それは「お小遣を貰う」という感じである。
ところで歸って暫くしたら、寄宿舍から手紙が來た。あけてみたら、娘一人一人について、舍監からの問合せの手紙で、ちゃんとした印刷の書類になっている。
問合せの第一項は、貴方の子供には、大學で決めている門限を適用していいか、というのである。それでよかったら、其處にマークをしてやれば、それですんでしまう。次に、もし不賛成だったら、次のどの時刻を選ぶかという質問がある。週日何時まで、週末何時までとして、その何時に、夜八時から十二時過ぎまで、いろいろな時間が書いてある。親は適當と思う時間のところへ、マークをしてやる。