中谷 宇吉郎
警察を凹ませた話
明治の日本の小咄に、こんなのがある。
錢湯から出て來た男が、月を仰ぎながらいい氣持で立小便をしていた。そこをお巡さんに見つかって「おい、こら、何をしてるか」と咎められた。その男は慌てて「へい、手拭をしぼっていました」といった。そしたらそのお巡りさんが「なるべく家へ歸ってからしぼった方がいいな」といった、というのである。
それと反對の話もある。これは或る執念深い男の逸話として傳えられているのであるが、その男が若い頃、立小便をしているところを、巡査に見つかってしまった。いくらあやまっても勘辨してもらえず、到頭バッキンをとられた。その男がひどくくやしがって、その後何ヵ月となく、その巡査のあとをつけて、或る晩、立小便をしているところをつかまえて仇をとったというのである。
この二つの話は、日本人の性格の二つの面を示すように思われるので、一寸面白い話である。ところが、これに類縁の話が、最近アメリカにもあった。形は一寸あとの場合に似ているが、話の性格が少しちがっているところが面白いので、紹介することにする。