中谷 宇吉郎

幻灯係

日本のある大學の若い教授P君が、アメリカの某所へ、研究員として暫く來ていた。そこの主任教授は、そう世界的な大學者というほどでもなかったが、何分こっちは餘所者なので、神妙に控えて、勉強していたそうである。

しかし、何分、P君は既に、日本では大學教授として、たくさんの助手たちをもっていたのに、アメリカに來ると、何から何まで自分でしなければならない。それに言葉も不自由なので、何となく冷遇されているような氣がして、居心地はそう良くなかった。

ある時、そこで研究發表會があった。そして、その主任教授が講演をして、そのあとこのP君も、自分の日本でやっていた研究を發表することになった。

アメリカのこの種の講演は、たいてい幻燈を使うので、この主任教授もたくさん幻燈を用意していた。そしていよいよ講演という時になったら、幻燈板を一とまとめにしてP君に渡し、これをこの順序で映寫してくれといったそうである。

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