中谷 宇吉郎

生活の組織

敗戰後の混亂時代に、生活の組織というものについて考えさせられたことがある。

食糧難の結果、止むを得ないことではあったが、皆が買い出しに出かけて、薯や野菜をつめた大きいリュックを背負って、汽車の窓から出入りした。あの汽車で薯や野菜だけを輸送したら、買い出しの量の何十倍かを運べたであろう。食糧と同時に、人間まで運ぶので、輸送難を益々深刻化したわけである。

食糧不足には、二つの要素があって、一つは食糧そのものの不足、今一つは輸送及び配分の問題である。そして後者の方が、とかく閑却され勝ちであるが、案外に重要な要素をなしている。そしてそれは組織の問題である。

敗戰後の數年間に、われわれがなめたあの困難の中には、組織が崩壞したために原因する部分が、相當の割合を占めていたようである。

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