中谷 宇吉郎

百回の随筆

七月の初めに、百回の隨筆といって頼まれた時には、百くらいの話題は、そうむずかしくはなかろうと思って、簡單に引き受けた。

ところが書いてみると、これはたいへんな重勞働であることがすぐ分った。三ツや四ツ書き溜めることは、初めのうちは何でもなかった。しかし少し經つと、大分種に苦しむようになり、それが重荷に感ぜられて來た。そうなると、やっと三ツ書き溜めたと思っても、少し仕事が忙しくなると、二日や三日はすぐ經つので、もう追っかけられることになる。

もっともこれは、初めから話が少し無理だったので、この百日間には、いろいろな計畫が前からあった。七月の末からは、高知の夏季大學に出かけた。これは十何年越しになっていた寺田先生の墓參りを果たす、という副目的があって、どうしても行かねばならない。

高知から八月三日に歸って來て、大急ぎで渡航手續をして、六日の晩には羽田を飛び出した。そして八日の朝から、シカゴの研究所へ顏を出し、すぐ實驗にとりかかった。前に二年間ここでやった實驗の結果を、昨年日本へ歸って來てから、纒めにかかったが、書いて見ると、いろいろ實驗の拔けたところが目について來た。

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