中谷 宇吉郎

放射能の害

今度のジュネーヴにおける原子力平和利用の會議で、放射能の遺傳に及ぼす障害が問題になった。

日本では放射能の雨や鮪の汚染が大問題になったが、アメリカはじめ諸外國では、今までそう問題にしていなかった。とくにアメリカでは、自國内のネヴァダ州で、何十回となく實驗をしていながら、平氣な顏をしていた。人體には害はないという自國の科學者の言葉を皆が信用していたからであろう。

しかし一つ問題が殘っていたので、それは現在は害はないが、將來遺傳の上で、惡影響があるかもしれないという點であった。放射能をあまりたくさん受けると、不具の子供が出來易いことは、動物實驗で分っていたからである。

もっとも原子力を使わなくても、地球の中の微量のラジウム類、及び宇宙線、それに人體内の炭素及び加里に、初めから少し放射能があるので、人間は少量の放射能ならば、大昔から受けていたのである。レントゲン單位という單位で測って、五十年間に七・一五くらいは、誰でも受けているのである。

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