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釘

ある商人が、市へ行きました。うまく商売をして、もっていった品物を、みんな売ってしまいました。おかげで、さいふは金貨やら銀貨やらで、いっぱいにふくらみました。

商人は、日の暮れないうちに、家へ帰ろうと思いました。そこで、金貨をいれた旅行かばんを馬にのせて、でかけました。お昼になり、商人は、とある町でひとやすみしました。やがて、またでかけようとすると、その店の下男が、商人の馬をひいてきて、

「だんな。左の後足の金靴の釘が、一本ぬけていますよ。」と、いいました。

「いや、ぬけていたってかまわんよ。これから、まだ六時間ばかり乗っていくんだが、そのあいだぐらいは、金靴も落ちはしないだろう。わしは今、いそいでいるんでな。」

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