和田 信賢

厳禁の広告放送

日本のラジオでは、広告放送は一切許容されてゐない。その昔は逓信局といふ放送にとつては大変怖いお役所があつて、一切の原稿はそこに提出する。アナウンサーの実況放送も原稿を提出しなければならないし、宮廷ニユースなどは全部アナウンスされたのを録音しておいて、万が一の時の証拠にする。

ましてや落語や漫才などで、うつかり、どこ/\の最中は美味しいとか、どこ/\の羊羹は甘いとかいはうものなら、パツとスイツチが切られてしまふ。喋つてゐる当人には分らないが、この遮断をする係りは四六時中遮断機を手に握つてゐなければならぬ。まことに御苦労様な御役目である。

ところがわれ/\アナウンサーが、この禁断の広告放送をついうつかりやらかしさうになつたことがたび/\ある。

決して故意にやつたわけではないのだが、神宮競技場などへ行くと、選手の控所では競技のウオーム・アツプにかゝる前に必ず手脚にサロメチールを塗つてゐる。この匂ひがぷん/\廊下を流れて来るが、こんなことはわれ/\アナウンサーにとつて放送のいゝ材料である。

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