佐左木 俊郎
駈落
一
朝日は既に東の山を離れ、胡粉の色に木立を掃いた靄も、次第に淡く、小川の上を掠めたものなどは、もう疾くに消えかけていた。
菊枝は、廐に投げ込む雑草を、いつもの倍も背負って帰って来た。重かった。荷縄は、肩に焼け爛れるような痛さで喰い込んだ。腰はひりひりと痛かった。脛は鍼でも刺されるようであったし、こむらは筋金でもはいっているようだった。顔は真赤に充血して、額や鼻や頬や、襟首からは、汗がぽたぽたと滴り落ちた。
「ああ、重かったちゃ。俺あ!」
佐左木 俊郎
一
朝日は既に東の山を離れ、胡粉の色に木立を掃いた靄も、次第に淡く、小川の上を掠めたものなどは、もう疾くに消えかけていた。
菊枝は、廐に投げ込む雑草を、いつもの倍も背負って帰って来た。重かった。荷縄は、肩に焼け爛れるような痛さで喰い込んだ。腰はひりひりと痛かった。脛は鍼でも刺されるようであったし、こむらは筋金でもはいっているようだった。顔は真赤に充血して、額や鼻や頬や、襟首からは、汗がぽたぽたと滴り落ちた。
「ああ、重かったちゃ。俺あ!」