佐左木 俊郎
季節の植物帳
序言
植物のもつ美のうちで、最も鋭く私達の感覚に触れるものは、その植物の形態や色彩による視覚的美であろう。それから嗅覚的美、味覚的美といった順序ではないかと思う。併し、私達の心の中のロマンチストは、その伝説を聞き、名称の持つ美から、未知の植物に憧れることが少なくない。そしてまた私達のセンチメンタリストは、廃墟に自然が培う可憐な野草に、涙含ましい思いを寄せることがある。
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植物の生理的作用は、その形態と色とによって植物体の美を表現する。深緑の葉、真紅の花、さては薄紫の色に、或いは淡紅色に…… そして春の野は緑に包まれ、夏の森林は深緑がしたたり、秋の林は紅葉の錦を纏う。落葉樹が寒風に嘯き早春の欅の梢が緑の薄絹に掩われるのも、それは皆すべて植物の生理的必然の作用に他ならない。