佐左木 俊郎
汽笛
改札孫の柴田貞吉は一昼夜の勤務から解かれて交代の者に鋏を渡した。朝の八時だった。彼は線路伝いに信号所の横を自宅へ急いだ。
「おーい! 馬鹿に急いで帰るなあ」
信号所の中から声をかけたのは彼と同じ囲いの官舎にいる西村だった。彼は振り返って微笑んだ。突然で言葉が出なかったのだ。
「細君はどうなんだ? 幾分かはいいのか?」
佐左木 俊郎
改札孫の柴田貞吉は一昼夜の勤務から解かれて交代の者に鋏を渡した。朝の八時だった。彼は線路伝いに信号所の横を自宅へ急いだ。
「おーい! 馬鹿に急いで帰るなあ」
信号所の中から声をかけたのは彼と同じ囲いの官舎にいる西村だった。彼は振り返って微笑んだ。突然で言葉が出なかったのだ。
「細君はどうなんだ? 幾分かはいいのか?」