佐左木 俊郎

熊の出る開墾地

無蓋の二輪馬車は、初老の紳士と若い女とを乗せて、高原地帯の開墾場から奥暗い原始林の中へ消えて行った。開墾地一帯の地主、狼のような痩躯の藤沢が、開墾場一番の器量よしである千代枝を伴れて、札幌の方へ帰って行くのだった。

落葉松林が尽きると、路はもはや落ち葉に埋められて地肌を見せなかった。両側には山毛欅、いたやかえで、斎※(「土へん+敦」、第3水準1-15-63)樹、おおなら、大葉柏などの落葉喬木類が密生していた。馬車はぼこぼこと落ち葉の上を駛った。その上から黄色の葉が、ぱらぱらと午後の陽に輝きながら散りかかった。渋色の樹肌には真っ赤な蔦紅葉が絡んでいた。そして傾斜地を埋めた青黒い椴松林の、白骨のように雨ざらされた枯れ梢が、雑木林の黄や紅の葉間に見え隠れするのだった。

「ほいや! しっ!」

馭者が馬を追うごとに、馬車はぎしぎしと鳴り軋めきながら、落ち葉の波の上を、沈んでは転がり浮かんでは転がって行った。

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