宮本 百合子

栄蔵の死

(一)

朝から、おぼつかない日差しがドンヨリ障子にまどろんで居る様な日である。

何でも、彼んでも、灰色に見える様に陰気な、哀れっぽい部屋の中にお君は、たった独りぽっちで寝て居る。

白粉と安油の臭が、プーンとする薄い夜着に、持てあますほど、けったるい体をくるんで、寒そうに出した指先に反古を巻いて、小鼻から生え際のあたりをこすったり、平手で顔中を撫で廻したりして居たけれ共一人手に涙のにじむ様な淋しい、わびしい気持をまぎらす事が出来なかった。

青空文庫の作品カード