宮本 百合子

冬の海

あんまりはっきり晴れ渡らない空合で、風も静かに気にかからぬまでに吹いて居る。

丁度満潮時で、海面は白と藍のむら濃になってゆるやかに息をついて居る。

かなり久しい間、海に来ないで居たので、波の音が、脳の中の、きたないものを皆持って行って呉れるかと思われる様に、新らしく感じられる。

小田原の海ほど高い波がよせないので、つれて景色ものどやかで、見て居ても快い。

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