宮本 百合子

無題(三)

未練も容謝もない様に、天から真直な大雨が降って居る。

静かな、煙る様な春雨も好いには違いないけれ共、斯うした男性的な雨も又好いものだ。

木端ぶきの書斎の屋根では、頭がへこむほどひどい音をたてて居るし、雨だれも滝の様で見て居ると目がくらむ。

到底軒の玉水などとやさしい事を云うどころではない。木の根元をくぐったり、草の根をすり抜けたりして、低い方へあとからあとから追っかけて流れる河が幾筋も出来、ポカポカと泡をただよわせながら、どしどし、どしどしとながれて行く。

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