宮本 百合子

一条の縄

月の冴えた十一月の或る夜である。

二羽の鴨が、田の畔をたどりたどり餌を漁って居る。

収獲を終った水田の広い面には、茶筅の様な稲の切り株がゾクゾク並んで、乾き切って凍て付いた所々には、深い亀裂破れが出来て居る。

小路は霜で白く光り、寒げな靄に立ちこめられた彼方には、遠く高い山並みや木立の影が夢の様に浮き上って、人家の灯かげがところ、どころにチラチラと、小さく暖かそうに瞬いて居る。

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