宮本 百合子
盗難
小さい妹の、激しい泣き声に目をさましたのは、彼れ此れもう六時であった。
三時頃に一度お乳を遣った丈だったので、空おっぱいをあずけたまま、先ぐお乳を作りに配膳室へ出て行った。
寝間着のお引きずりのまま、二人が腫れぼったい目にもう強過ぎる日光で、顔をしかめながらお湯を沸かしに台所へ出ると、中央の大テーブルの真中に妙なものが、のっかって居る。
いつも、一番奥の部屋――私共の床のある所の隅に置いてある筈の桐の小箪笥が、すっかり掻き廻した様になって居るのである。
宮本 百合子
小さい妹の、激しい泣き声に目をさましたのは、彼れ此れもう六時であった。
三時頃に一度お乳を遣った丈だったので、空おっぱいをあずけたまま、先ぐお乳を作りに配膳室へ出て行った。
寝間着のお引きずりのまま、二人が腫れぼったい目にもう強過ぎる日光で、顔をしかめながらお湯を沸かしに台所へ出ると、中央の大テーブルの真中に妙なものが、のっかって居る。
いつも、一番奥の部屋――私共の床のある所の隅に置いてある筈の桐の小箪笥が、すっかり掻き廻した様になって居るのである。