泉 鏡花

夜行巡査

一

「こう爺さん、おめえどこだ」と職人体の壮佼は、そのかたわらなる車夫の老人に向かいて問い懸けたり。車夫の老人は年紀すでに五十を越えて、六十にも間はあらじと思わる。餓えてや弱々しき声のしかも寒さにおののきつつ、

「どうぞまっぴら御免なすって、向後きっと気を着けまする。へいへい」

と、どぎまぎして慌ておれり。

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