夢野 久作

笑う唖女

「キキキ……ケエケエケエ……キキキキッ」

形容の出来ない奇妙な声が、突然に聞こえて来たので、座敷中皆シンとなった。

それはこの上もない芽出度い座敷であった。

甘川家の奥座敷。十畳と十二畳続きの広間に紋付袴の大勢のお客が、酒を飲んでワイワイ云っていた。奇妙な謡曲を謡う者、流行節を唄い唄い座ったまま躍り出しているもの……不安とか、不吉とかいう影のミジンも映していない、醇朴そのもののような田舎の人々の集まりであった。それが皆、突然にシンとしてしまったのであった。

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