徳田 秋声
絶望
『オイ/\何處へ行くんだよ。』
とお大と云ふ裏町のお師匠さんが、柳町の或寄席の前の汚い床屋から往來へ聲をかける。
聲をかけられたのは、三人連の女である。孰も縞か無地かの吾妻に、紺か澁蛇の目かの傘を翳して、飾し込んでゐるが、聲には氣もつかず、何やら笑ひさゞめきながら通過ぎやうとする。
『オイ/\、素通は不可いよ。』とお大は一段聲を張あげて憤れつたさうに、
徳田 秋声
『オイ/\何處へ行くんだよ。』
とお大と云ふ裏町のお師匠さんが、柳町の或寄席の前の汚い床屋から往來へ聲をかける。
聲をかけられたのは、三人連の女である。孰も縞か無地かの吾妻に、紺か澁蛇の目かの傘を翳して、飾し込んでゐるが、聲には氣もつかず、何やら笑ひさゞめきながら通過ぎやうとする。
『オイ/\、素通は不可いよ。』とお大は一段聲を張あげて憤れつたさうに、